12.6 デジタル時代に教えるための組織的戦略
FD、研修、クラス規模、契約講師やTAの雇用、チーム・ワークに関わる問題は、デジタル時代(実際、どんな時代にも当てはまりますが)に必要な知識やスキルを伸ばす教育ができる組織の理解力に影響を与えるでしょう。あなたが大学に勤務する終身教授ならば、デジタル時代の必要性に見合うようにあなたの授業に必要な更新を個人で行うのも可能かもしれません。しかし、他の大多数の教員のためにも、教育機関で全体として、必要に応じた教育の更新を支援する必要があります。
教育機関は次のような組織的な計画や戦略を持つことで最適な支援ができるでしょう。
- 教育を更新すべき原理の探究
- このような更新によって起こる目標と結果の検討(例えば、学習者が特定のスキルやコンピテンシーが身につくなど。)
- 更新を支援する行動(例えば、新しいコース設計への財政的支援、教育サービスの再編成など。)
- 意図される更新を支援する財政的戦略(例えば、教育におけるイノベーションの財政的支援など。)
- その戦略の実施に関する評価方法の模索
戦略を立てる方法はいろいろあります。(Bates and Sangrà, 2011を参照) 全体の目標を設定するためには、トップ・ダウンとボトム・アップ両方のプロセスが必要となります。大学では、学部の次の3年間の計画を提出する年次計画プロセスを通して行われるでしょう。これは、大学が設定した全体の学術的な目標に合わせることを基盤とし、必要な人員や予算なども含まれます。このような計画サイクルでは、作成の際に学部が「ターゲット層」とする学習者の、デジタル時代におけるニーズに合わせた到達目標を含めることが重要です。この計画には扱われる内容だけでなく、理論的根拠のある指導方法や教授法も示すべきです。
いくつかの大学では既にデジタル時代に必要な種類や品質の教育に重点を置くことを目標とした計画を実施しようとしています。例えば、ブリティッシュ・コロンビア大学の フレキシブル・ラーニング・イニシアティブ やオタワ大学の eラーニング計画 があります。改めて言うべきことではありませんが、本書の読者にとって重要なのは、このような大学では、手段や方向性をまとめるために積極的に動いているのを知っておくことです。組織的な支援なしには、大きな変化を起こすことは難しいでしょう。
アクティビティー12.6 教育と学習を支援するための組織的戦略を開発する
- あなたの属する組織は教育と学習において何らかの戦略がありますか。その戦略は適切なものでしょうか。その戦略はデジタル時代の学習者のニーズに対応していますか。
- もしあなたが教育と学習の組織的戦略を設計したり変えたりできるなら、その中に何を入れますか。
参考文献
Bates, A. and Sangrà, A. (2011) Managing Technology in Higher Education San Francisco: Jossey-Bass/John Wiley and Co