A.5 スキルの獲得

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Figure A.5 Skills
図A.5 スキルは何から構成されるか

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A.5.1 デジタル時代のスキル

セクション1.2 では、デジタル時代に卒業生が必要とするスキルをいくつか列挙し、あらゆる段階の教育、特に特別なコンテンツに焦点を当てている中等後教育において、そのようなスキルの獲得が重要であることを述べました。批判的思考、問題解決、創造的思考などのスキルは高等教育では常に重視されてきましたが、このようなスキルの認識と獲得は、教員がそのようなスキルを利用しているのを観察して、あるいはコンテンツの学習の結果、知らぬ間に学生が行なっているのかのように、暗黙的に、そしてほとんど偶発的に行われています。

コンテンツは知的スキルの獲得を推進する原動力であるため、コンテンツをスキルと切り離すことは当然ながら不自然です。ここでの私の目的はコンテンツの重要性を軽視することではなく、スキル獲得に対して教員が多くの注意を注ぐようにすること、そして見習いが熟練の職人の中で訓練されるのと同じように、正確かつ明示的な方法で知的スキルの獲得に取り組むことです。

A.5.2 スキル獲得の目標設定

ここでの重要なステップは、特定のコースや専攻プログラムがどのようなスキルを伸ばそうとしているのかを明確にし、それらを実行および評価できるように目標を設定することです。言い換えれば、あるコースで批判的思考を習得させることを目的とすると述べるだけでは不十分であり、そのコースやコンテンツの分野の文脈の中ではどのようなものであるのか、明確に述べていることが求められます。スキルは評価できるような方法で設定しておくべきであり、学生も評価に利用される基準やルーブリックを知っているべきです。スキル獲得については本書の至るところで議論されていますが、特に下記で言及しています。

A.5.3 思考アクティビティー

あなたがそれを持っているか持っていないかという意味で、スキルとは黒か白かというように決められるものではありません。初心者、中級者、専門家、熟練者のそれぞれの観点でスキルやコンピテンシーについて語られる傾向がありますが、実際にはスキルは常に実践と応用を必要とし、少なくとも知的スキルに関しての最終到達地点はありません。

したがって、コースや専攻プログラムを設計するときには、もし可能であれば小さなステップから始めて、徐々に大きなものに導くような形で、学生が継続的に思考スキルを開発し、実践し、適用していくアクティビティーを設計することが非常に重要です。これを行う方法はたくさんあります。例えば、何かを書く課題、プロジェクト作業、そして集中的な議論を行うことですが、これらの思考アクティビティーは事前に設計されてあり、教員は一貫した条件で実行することが必要です。

A.5.4 実践アクティビティー

職業としてのプログラミングでは、学生が操作スキルを獲得するための多くの実践的なアクティビティーが必要であることは当然の事実です。これは知的スキルについても同じです。学生は習得の途上でどこにいるのかを実演し、それに対する感想を得て、その結果に対して再挑戦していきます。つまり学生は特定のスキルを、練習を通じて身につけていくことを意味します。

歴史のシナリオ( シナリオD )では、学生は最初の3週間で重要な内容を網羅して理解し、グループで研究し、合意を得た上でプロジェクトの報告を eポートフォリオの形で作成し、他の学生と共有しなければなりませんでした。教員はコメント、フィードバック、評価を行い、学生はそのレポートを口頭およびオンラインで発表します。理論的にはこのようなスキルの多くを他のコースでも活用し、スキルをさらに洗練させ、伸ばすことができるでしょう。このように、スキル獲得においては、単一のコースだけでなく、長期的な視点も必要になるでしょう。そのためコース計画と同様、専攻プログラムへの統合も重要です。

A.5.5 知的スキルを伸ばすためのツールとしてのディスカッション

ディスカッションは思考スキルを磨くための非常に重要なツールです。しかしどんな種類のディスカッションでも良いわけではありません。第2章 では、学問的知識について、日常的な考え方とは異なる種類の考え方の必要性を述べました。それは通常、学生に対して潜在的な原則、抽象化、考え方という点で、世界の見方を変える要求をするということです。そのため教員の慎重な管理の下で、対象分野の学習と統合させた思考スキルの向上に焦点を当てたディスカッションを行う必要があります。教員が授業の中でディスカッションを計画、構成、支援する際、ディスカッションの焦点がずれないようにしながら、そして専門家であればディスカッション中のトピックにどのように取り組むかを実演し、学生の取り組みと比較する機会を提供する必要があります。ディスカッションの役割については、セクション4.4 および セクション11.10 で詳しく説明しています。

A.5.6 結論

最高レベルの学問的なコースでも、その学問的な価値や基準を損なうことなく、デジタル時代の仕事や生活に引き継がれる知的スキルや実践スキルを身に付けるための多くの機会があります。職業コースでも学生は問題解決スキル、コミュニケーション・スキル、協働学習などの知的スキルや概念スキルを実践する機会が必要です。ただしこれは単にコンテンツの配信を行うだけでは発生しません。教員は以下のことを視野に入れておく必要があります。

  • 学生に必要なスキルについての正確な検討
  • どうすれば科目の本質が学生に必要なスキルと適合するか
  • 学生が知的スキルを伸ばし向上させることができるアクティビティーとは
  • 利用可能な時間とリソースの範囲内でフィードバックを提供し、これらのスキルを評価する方法

これはどのようにして、そしてなぜスキル獲得を学習環境に組み込むべきなのかという、非常に簡潔な議論です。

アクティビティーA.5 スキルの獲得

  1. シナリオD のラルフ・グッドイヤーは彼のコースで、どのようなスキルを伸ばそうとしましたか。
  2. シナリオD で学生が獲得しようとしているスキルはデジタル時代と関連がありますか。
  3. このセクションはあなたの科目の教え方を変える可能性がありますか。それとも既にあなたは適切にスキル獲得について網羅していますか。もしもスキル獲得を上手くさせていると感じるなら、あなたのアプローチは私のものとは異なりますか。

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デジタル時代の教育 by Anthony William (Tony) Bates is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License, except where otherwise noted.

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