A.7 リソース

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図A.7 リソースは何から構成されるか
図A.7 リソースは何から構成されるか

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学習者の特性によっては、あなたは利用可能なリソースをあまり制御できないかもしれませんが、リソース(あるいはリソースの不足)は教育の設計に大きな影響を与えます。適切なリソースを求めて交渉することは多くの教員にとって最も困難な課題の1つです。設計に対するリソースの影響についても、本書全体を通して説明していますが、特に下記で説明しています。

A.7.1 教育支援

教育補助は、補助教員、任期制教員、ティーチング・アシスタント(TA)、図書館司書、技術スタッフ、インストラクショナル・デザイナー、メディア・プロデューサーと関連します。教育機関は、教員が一定数の学生に対して何人の支援スタッフを持つことができるかについての方針や運用基準が用意されていることもあります。

支援スタッフを使う最善の方法を考えることは重要です。大学では、大きなクラスを複数の小クラスに分割し、それぞれの小クラスに任期制の教員やTAを配置し、比較的独立した状態で運用するようにしていますが、教員の質によって、小クラスの間で教え方の質に大きな差が出る傾向があります。しかし新しいテクノロジーは、より一貫性を持った形で別々に教えることを可能にしています。

例えば、ベテランの教授が全体的なカリキュラムと評価方法を決定し、そしてインストラクショナル・デザイナーと協力してコースの全体的な設計をするかもしれません。その後、ベテランの教授の監督のもと、任期制の教員や TA が、コースを対面式・完全オンライン・ブレンド型で提供するために雇われます。この例としては全国学術改革センターを参照して下さい。反転授業は別の方法でリソースを整理するもう一つの方法です。この例としては心理学のブレンド型学習を参照して下さい。

A.7.2 設備

これは主に、教室、研究室、図書館など、教員や学生が利用できる物理的な施設を指します。これらは教育に制約を与える可能性があり、例えば、講堂や教室の物理的な状況によってはディスカッションやプロジェクト作業が制限されることもあります。あるいは教室割り当ての都合により、ある教員は1週間につき3時間の教室での講義と6時間の実験室という具合に設定されてしまうこともあり得ます。(デジタル時代の教室を再設計する試みについては、オンライン学習がどのように教室の設計に影響を与えるかを参照して下さい。)

オンライン学習は、そのような厳しい物理的な制約から教員や学生を解放することができますが、それでも教育の単元化、モジュールの構造化、組織化は依然として必要です。

A.7.3 テクノロジー

特に LMS、講義録画システム、ソーシャル・メディアなどの新しい技術の開発は、教育と学習の設計に根本的な意味を持ちます。これらについては、第6章第7章第8章でさらに詳しく説明していますが、効果的な学習環境を説明するために教員が利用できるテクノロジーは、双方向的で魅力的な学習環境を学生に提供するために非常に役立ちます。ただし、テクノロジーは効果的な学習環境を構成する1つの要素にすぎず、他の全ての構成要素とバランスをとりながら統合していくする必要があることが重要であることは強調しておいてもよいでしょう。

A.7.4 教員の時間

全ての中で最大かつ最も貴重なリソースです。効果的な学習環境を築くことは反復的なプロセスですが、結局のところ、教育設計、そしてある程度までは学習環境の全体は、教員(とそのチーム)が教えるために利用できる時間に依存するでしょう。教員の時間が非常に慎重に管理されていない場合、利用可能な時間が少なければ少ないほど、学習環境はより制限的になってしまいます。しかし、やはり、良い設計は指導に使える時間を考慮に入れているものです。(特にセクション11.9を参照。)

A.7.5 リソース、クラスの規模と管理

不十分なリソースで管理しようとすること以上に、教員の気を散らすものはありません。確かに、教員が追加の補助教員なしで、広い講堂で200人の学生を教えるクラスを割り当てられたならば、教員は豊かで効果的な学習環境を作るのは困難でしょう。リソースが少なければ選択肢も少なくなるものです。その一方で、30人の学生を対象とする教員は、幅広いテクノロジーを使いながら、カリキュラムの編成や構成の自由が与えられ、インストラクショナル・デザイナーとWebデザイナーの支援を得て、多様な設計や可能な学習環境を検討することができます。

そうは言ってもリソースがほとんどない状態こそが、おそらく伝統的な教育モデルから抜け出すために最も創造性が必要とされる時です。利用可能でありさえすれば、新しいテクノロジーによって、少ないリソースしかない大きなクラスであったとしても比較的豊かな学習環境を設計することができます。これについてはセクション12.5で詳しく説明しました。しかし期待は現実的である必要があります。教員と学生の比率が1200 以上の状況で適切な学習者サポートを提供するのは常にやりがいのある仕事です。再設計による改善は可能ですが、奇跡はありません。(オンライン教育による生産性向上の詳細については、生産性とオンライン学習のReduxを参照してください。)

アクティビティーA.7 どのようなリソースが重要か?

  1. 私が含めるべきであった効果的な学習環境の設計に影響を与える他のリソースはありますか。
  2. ウィンストン・チャーチルはかつて「私たちが自らの建物を形作り、その建物が私たち自身を形作る。」と言いました。オンライン学習によって、建物が教育や学習の設計に課す制約をどの程度まで解放できると思いますか。オンライン学習は設計に関して、どのような新しい制約をもたらしますか。
  3. 教育補助の問題全体についてどのように感じますか。私は、教育の質の観点から、大学の講義助手としての学生の利用について非常に不安に感じています。また、任期制教員や補助教員は経営面においてひどく扱われていると思います。ブリティッシュ・コロンビア州では2件、最高裁判所への訴訟があり、学校でのクラスの規模と構成、特に学校の教員が学習障害のある学生に対処するために、どれだけの援助を受けなければならないかについて主張した教員らのストライキがありました。さて、より質の低い安価なサポートを提供することは、教員にとって学生の学習環境を強化するのでしょうか。それとも弱化させるのでしょうか。

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デジタル時代の教育 by Anthony William (Tony) Bates is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License, except where otherwise noted.

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