シナリオG:流域管理

Print
Figure 10.1 The Hart River, Yukon. Image: © www.protectpeel.ca, CC BY-NC
図10.1.(G) ハート川, ユーコン州.
画像: © www.protectpeel.ca, CC BY-NC
Print

長年にわたり、ウェスタン・カナダ大学の土地管理・林業学部の研究者たちは、実施した研究成果として、流域管理に関する一連のデジタル・グラフィック、コンピュータ・モデル、シミュレーションを開発してきました。これは学部で実施した研究成果の公表という目的のみならず、将来の研究に対する支援や基金を狙ったものという目的もありました。

数年前の教員会議における熱心な議論の結果、研究者たちは、クレジットの明記を課し、著作権者、すなわち研究成果物の責任者である教員からの特別な書面による許可がなければ商業利用はできないというクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で、これらの教育リソースを教育目的のために公に再利用できるようにすることに、ごく僅かな差ではありましたが、賛成票を投じました。

投票を動かしたのは、研究に積極的に関わっていた教員の多くが、これらの教育リソースをより広く利用できるようにしたいと願った結果でした。主に国立研究評議会など、学習成果物の開発に対して資金提供をしている機関は、これらの成果物をオープン教育リソース (OER) として広く利用できるようにする動きを歓迎しました。

当初、研究者たちはグラフィックとシミュレーションを研究グループのWebサイトに載せただけでした。これらのリソースを指導で利用するかどうかは、個々の教員の裁量にゆだねられていました。時間が経つにつれて、教員はこれらのリソースをキャンパス内の学部生および大学院生向けコースに取り入れ始めました。

しばらくしてからのことですが、この OER は話題になりました。研究者たちは世界中の他の研究者からメールや電話を受け始めるようになったのです。研究成果としてデジタル素材を作成している同じ分野の研究者のネットワークやコミュニティがあることが明らかになり、他のサイトからの素材の共有や再利用は理にかなっていました。そして最終的に流域管理に関する学習成果物を集めた国際的なWebポータルへと発展しました。

また、研究者らは、政府省庁や環境省、地元の環境団体、先住民の団体、そして時には大手採掘会社や資源採掘会社など、様々な機関から声がかかり、研究者たちにとってはそれなりに大きなコンサルタントの仕事へとつながりました。そして学部では自然保護団体やいくつかのエコロジー団体などの非政府機関、以前からの資金提供元であった国立研究評議会からさらなる研究資金を集めて、より多くの OER を開発することができました。

この時、学部はかなり多くの OER にアクセスできるようになっていました。半分もしくは5分の2が完全オンラインの OER を中心に構築されたコースが既にあり、学部生および大学院生に提供されていました。

そして、米国のある大学とシエラレオネのある大学が共同で、既存の OER を中心に構築した、流域管理について学習するはじめての完全オンラインの大学院向け証明書プログラム開発の提案が実行されることになりました。この認定プログラムは、その費用を授業料から調達するものでしたが、シエラレオネの25名の学生の授業料については最初、国際援助機関で賄われるようになりました。納付金で新たに専任教員を雇い、証明書プログラムでの教育や欠員補充に当てたいと考えた学部長は大学当局を説得し、厳しい交渉の後、証明書プログラムからの授業料は学部へ直接支払われることになりました。そして学部は授業料収入の25%を諸経費として大学に支払うことになりました。

アフリカ諸国との契約やパートナーを有するカナダの鉱業および資源採掘会社に対して、英語とフランス語で証明書プログラムを提供するという決定は、カナダ外務省からの相当な額の助成金を受けることができ、かなり容易になりました。

この証明書プログラムは、北米、ヨーロッパ、ニュージーランドの学生を引き付けることに大成功し、OER と証明書プログラムへの関心は高まったにもかかわらず、アフリカではシエラレオネの大学との提携以上には受け入れられませんでした。証明書プログラムを2年間実施した後、学部は2つの大きな決定を下しました。

  • さらに3つのコースと研究プロジェクトを証明書コースに追加する。これは流域資源管理に関して、完全に費用回収できそうなオンライン修士課程として提供される。特にアフリカ諸国の管理職や専門家の参加を呼びかけることになるだろう。そして多くの学生が要求している認定資格を提供することになるだろう。
  • 研究者と何らかの形で関係している大規模な外部専門家ネットワークを利用して、大学は流域管理問題に関する一連のMOOCsを提供し、大学外の専門家にもボランティアで MOOCs に参加してもらい、リーダーシップを発揮してもらう。そのMOOCsでは既存の OER を利用しても良いだろう。

5年後、持続可能性という点について、学部長は国際会議で次の成果を報告しました。

  • オンライン修士課程の大学院生の数が、キャンパスに通う大学院生の総数の2倍となった。
  • 修士課程は授業料から費用を賄うことができた。
  • 修士課程の卒業生は年間120 人であった。
  • 修士課程の修了率は64%であった。
  • 新たに6名の専任教員が採用され、さらに6名の博士研究員が採用された。
  • 数千人の学生が証明書または修士課程の少なくとも1つのコースを登録して授業料を支払った。そのうち45%はカナダ国外からの学生であった。
  • 10万人以上の学生がMOOCsを受講し、約半数は開発途上国からの参加だった。
  • 現在、流域管理に関しては1000時間を超える OER が利用可能であり、世界中で何度もダウンロードされている。
  • 大学は現在、流域管理に関する世界的リーダーとしての地位を国際的に認知されている。

これは純粋に私の想像の中のシナリオですが、実際にブリティッシュ・コロンビア大学で行われている素晴らしい研究の影響を受けたものです.

License

Icon for the Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License

デジタル時代の教育 by Anthony William (Tony) Bates is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License, except where otherwise noted.

Share This Book