付録D:独立した書評とその過程について

商業出版とオープン・パブリッシング

一般に、学術書または教科書を出版する前に、商業出版社は2つの段階、つまり作者が著書に関する提案書を提出する段階と、初稿を出版社に送る段階で、独自の書評を求める。外部の書評者と同様、出版社には意思決定プロセスの責任者である専門編集員がいるが、その場合でも編集者は内部委員会で、あるいは最終承認のための重役会議でさえ、最終的な提案を取り上げる。各段階では最長で3ヶ月かかり、時には第2段階の方に時間がかかる。作者が出版前に中身に関する変更を行う必要がある場合には、さらに長い時間がかかる。そして出版した後にも、その分野に特化した学術誌で独自に再度、書評が行われる場合がある。

この長い承認および書評プロセスは、著者にとって非常にストレスがたまることであるが、このプロセスによって著者はフィードバックを確実に得ることができる。何よりもこのプロセスは品質管理プロセスの一部であり、書籍が高等教育機関における終身在職権の確保と昇進プロセスにおいて非常に重視される理由の1つである。

自費出版書籍では、このプロセスを追従する必要は全くないが、オープン・テキスト・ブック(OpenStaxやBCcampusからの書籍など)は、ほぼ必ず、こうした書籍を採用し得る管轄の教員によって独自に検閲される。

ただし本書は若干異なる。本書は学生向けではなく、異なる市場、教員、および指導員向けにゼロから書かれたものであり、BCキャンパスが管理するブリティッシュ・コロンビア州政府のオープン・テキスト・プロジェクトの一部ではない。BCキャンパスからは必要不可欠な技術的支援を提供していただいたが、本書を編集したり書評する責任はなかった。

したがって、著者は独自に3回の書評を受けることを決定し、BCキャンパスのテキストブックを利用した場合と同様に、こうした書評を本書の一部として変更を加えずに公表した。

書評者選択基準

候補となる書評者に打診するにあたって、以下の基準を用いた。

独立性

独立した書評のためには、できる限り客観的な書評者を見つけることが必要なのは明らかである。著者は、この40年間、当該分野で働いてきたが、著者とは密接な関係がなく、しかも客観的であり、著者と著者の経歴から十分に「距離のある」専門家を見つける必要があった。

当該分野での資格または経験

資格に関しては、デジタル教育および学習、インストラクショナル・デザイン、オンライン学習やオープン教育の分野の専門家でもある書評者が必要だった。こうした基準を満たす人は多いが、独立していると見なされる必要もあった。

また、本書は教員や指導者も読者として想定しているため、教育および学習に関心がある主要な教員の一員であるが、著者の以前の仕事を知らないか、またはそれに関わりがなく、教員または指導者の観点から厳密に判断できる書評者を、最低1名見つけることも重要であった。

書評者の意欲および都合

500ページもの教科書の書評に伴う作業量は極めて多い。一般に出版社は外部書評者に少額の料金を支払う。これは関わった作業に対する報酬では決してないが、少なくともそのために評価が甘くなりやすくなる。ましてや著者が書評者に対価を支払って第2著者に加わってもらった場合には、書評者の独立性に不当に影響したとみなされたかもしれない。

著者は、書評者の意欲および都合のうち、1つまたは両方を満たした合計4名の書評者に打診し、うち3名は直ちに本書の書評に同意した。著者が依頼した書評者の誰からも対価は要求されなかったし、言及もされなかった。書評に同意した3名は、依頼してから1ヶ月以内に書評を提出した。

書評に対する指針

商業出版社は、書評者間の一貫性を確保し、出版社が求めているものを書評者に明らかにするために、書評者に委託する際に、印刷および発行前の完全原稿とともに、書籍を書評するための指針を明記した書簡または規格書を書評の最初の段階で送付する。出版編集者は、ある本に特有の事項に対応することを依頼することもあるが、一般的な指針も多い。

自費出版の教科書の場合は状況が若干異なり、独立した書評を受けるか否か決定する。その際に、書評者に適切な指針を提供することは、著者の責任である。著者は、書評者が各自の基準を用いるのを奨励したものの、書評者らには、オープン教科書の外部書評者向けにBCキャンパスが利用する指針を参考に、以下に述べる指針案を送付した。

  1. 本書はどの程度、その主要市場(教員および指導者)のニーズを満たすことに成功しているか。
  2. 本書は学究的作品の要件を満たしているか。本書は研究および証拠に基づいており、当該分野で重要な問題を批判的に解析しているか。
  3. 本書は教員や指導員が各自の教育の改善に役立つ、証拠に基づく実際的な運用基準を提供しているか。
  4. 本書はデジタル時代の教育における主要な最新の問題を十分に扱っているか。
  5. 本書は適切に書かれているか。読みやすいか。適切に体系化され構成されているか。文法的な間違いや重大な誤植がないか。画像や事例は適切に選択されているか。
  6. 本書を推奨するにあたって、大きく変更する箇所があるとすればどこか。若干変更したい箇所はどこか。
  7. 本書を商業出版社に提供する場合、出版を推奨するか。

(訳注:3名からの書評は省略しました。)

ライセンス

クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利 4.0 国際 ライセンスのアイコン

Copyright © 2020 『日本語版』, 2015 Anthony William (Tony) Batesの「デジタル時代の教育」は、特に断りのない限り、クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利 4.0 国際 ライセンスに規定される著作権利用許諾条件。

この本を共有