A.10 良い設計の基礎を固める
私はここまで一つの実行可能な学習環境を紹介してきました。これはあくまで例であり、推奨するものではありません。それはおそらく学校よりも中等後教育の状況に適しています。例えば、学校という文脈では、あなたの根底にある認識論と、教育や学習に対する信念にもよりますが、遊びと両親が2つの重要な要素となるでしょう。
A.10.1 認識論と学習環境
私たちは皆、教育や学習についての認識や哲学的立場が異なります。これは2つの異なる比喩によって説明することができます。教育と学習は、石炭の採掘と輸送に非常によく似ているという人がいます。知識は石炭であり、石炭は採掘(研究)され、積まれ、そして輸送(教育)されなければならないという認識です。学習者は知識がつまれる籠または鉄道貨車と見なされます。教員はシャベルです。このプロセスでは、学習者は知識を別のものに変換しないという意味で比較的受動的です。知識は何か別のものには変化しません。
私の母方の家族は炭鉱の仕事をしており、父方の家族は鉄道の仕事をしていましたが、私は教育と学習は、このような説明とは違うと思います。私は教育を庭に見立てています。学習者は植物です。したがって、庭師は、光、土壌、水のバランスを適切に調節して、雑草や昆虫による被害を受けないようにして、植物が成長し成長する生態環境を作り出すための最善を尽くします。そして私は学習を個人の成長・発達と見ています。私の教員としての仕事は、学習者が成長し発達できる最善の環境を提供することです。
教員は、学生が成長して自らの学びを発展させることができる学習環境を考え出す必要があります。知識とは静的なものではなく、学習者の中で成長し発展します。特にデジタル時代では、学習とはコンテンツを蓄積することだけでなく、同時にスキルを磨くことを意味します。私が説明した学習環境は、教育についての私の構成主義者としての立場と「養育」アプローチを採る立場を反映しています。
たとえあなたが異なる認識論の立場であり、異なる方法で知識や学習を捉えたり、あるいは中等後教育とは全く異なる文脈で教えたりしていても、本書は学習を効果的にするために考慮されるべき全ての要素を確認したり、どのように構成すべきかについて確認するための手助けとなるでしょう。私たちの学習環境はデジタル時代では、もはやレンガとモルタルに囲まれていないことを覚えておくだけの価値があります。テクノロジーにより、学習を促進するための多様な、そして、より柔軟な環境を生み出すことができるのです。
A.10.2 必要だが十分ではない
教員として、新しい学習ニーズ、学習者の特性の変化、現在利用可能な新しいテクノロジーを踏まえつつ、学習環境に必要な全ての要素を念頭に置いているならば、コースや専攻プログラムをどのように設計、実装するかについて考える立場として既に先頭集団を走っています。学習環境の構成要素は、専攻プログラムを設計、提供する際に考慮すべき点という意味で、一種のチェック・リストの役割を果たします。効果的な学習環境を作るために必要な全ての要素を分析することで、あなたの教育の設計の強力な基盤になります。
ただし、主要な要素が特定されたとしても、それらの要素の設計方法と提供方法について様々な決定を下す必要があります。いくら強力なコンセプトの基盤があっても、それを実装する必要があります。言い換えれば、あなたはまだ教育を設計する必要があるのです。
アクティビティー A.10 あなた自身の学習環境を設計する
- あなたが教えているコースや専攻プログラムの現在の学習環境を説明してください。
- 最も注意している主な要素は何ですか。
- この章を読んだ結果として、その学習環境に変更を加えますか。それはなぜですか。
- コースや学生のニーズに最も適した学習環境を設計できますか。これを行うにはあなたが以下の2つを行う必要があります。
- 重要な主要要素とその下位要素を決定する。
- それぞれの下位要素について選択または決定を下す。