7.7 教育メディアの特性を分析するための枠組み
まず、この章で紹介した様々なメディアに独特の教育的特徴についてまとめてみましょう。
図7.7 では様々なオンライン学習ツールを図示しています。ここでは主に客観主義者(黒)、構成主義者(青)、結合主義者(赤)の認識論的連続体の中にそれぞれを割り当てましたが、他にも2つの次元、すなわち教員側で制御するか、学習者側で制御するか、さらに単位を与えられるものであるか、そうでないか (Credit/Non-credit) についても加えています。この図では、講義やセミナーなどの従来の教育手法を含めて比較することもできます。
図7.7 はそれぞれのツールに関する私の個人的な解釈が含まれています。ですから他の教員の方々がこれらのツールを用途に応じて違った形で図示することもあるでしょう。全てのツールやメディアがここに含まれているわけではありません。例えば音声や動画については含まれていません。また、実際の使い方によって図の中の位置が変わるという場合もあるでしょう。教員だけがコース上でブログ機能を使う場合には、学習管理システムは構成主義的な方法で使うことができ、ブログは完全に教員制御型となるでしょう。ここでは、教育メディアを厳正な方法で分類しようとすることではなく、どのツールやメディアが特定の教育アプローチに最も適しているか、教員が判断する際の枠組みの提供を目的としています。実際、教員によってはメディアやテクノロジーの教育的価値を分析する際の枠組みとして別の方法を好む場合もあるでしょう。
しかし、図7.7 で紹介したいことは、例えば教員が LMS を利用することで一連の教材、運用基準、手順を提供できるということ、また学習者はデータ収集のために携帯電話を使って撮影した、写真のような複数のソーシャル・メディアを組み合わせて課題を仕上げることができるということ、そして教員は課題提出期限を管理できるようになるということです。教員は LMS 上のスペースと仕組みを生かし、学習者に学習教材をeポートフォリオの形で提供します。このポートフォリオには学生自身の作品をアップロードすることができます。小さいグループで学習者たちはディスカッション・フォーラムや Facebook を使いながらプロジェクトを一緒に進めることができます。
上の例は単位認定されるコースでの枠組みの場合ですが、Facebook やブログ、YouTube などのツールに絞ることで、学校機関以外や非公式な学習でもソーシャル・メディアを利用する枠組みを適用できることでしょう。このような応用事例では学習者自身がツールと利用方法を決めることになりますので、どちらか言えば学習者主導型になります。第5章で見たように、最も強力な例は結合主義者、すなわち cMOOCs です。
アクティビティー7.7 教育モジュールのためのメディアの選択
1. あなたが教えているコースの中から1つ、モジュールまたは主要トピックを選んでみましょう。主な学習目標を特定し、扱う内容領域を選びましょう。
2. この章で述べたそれぞれのメディアの主な特徴を調べ、それぞれのメディアでどのように教えるか考えてみましょう。アクティビティー7.2から7.6のあなたの分析を使ってください。そして、あなたが選んだ機能と教材内容とスキルの関係についてリスト化してみましょう。
3. 図7.7 を利用して、使う可能性のあるツール類やメディアを連続体の中に配置してみましょう。
4. あなたの選択にもう満足しましたか。
心配いりません。まだ終わっていません。次の章では、より現実的に意思決定する方法を説明します。アクティビティーの主な目的は、あなたが教える分野で、様々なメディアがどのように利用できるかを考えてもらうことです。
重要ポイント
教育と学習のために利用可能なメディアはとても幅広いです。特に:
- 文字、音声、動画、コンピュータの利用、ソーシャル・メディアは、いずれも教育と学習に有益な独特の性質を備えています。
- メディアの選択または組み合わせは、以下のそれぞれに基づいて決定しなければなりません。
- 学習指導の背後にある総合的な教育理念
- 科目または内容における表現上または構造上の要件
- 学習者に身につけさせるべきスキル
- 教員が(そしてこれまで以上に学習者自身が)異なるメディアにできる役割を見抜く想像力
- 既に学習者はソーシャル・メディアによって、自分自身のための学習教材を新たに作り出す、あるいは自らの知識を表現するための強力なツールを手に入れています。
- 学習コースは学習者個々人の興味に合わせ、目の前の状況に臨機応変に対応できる能力を鍛え、学習成果を上げるために最適な学習内容や素材を見つける手助けをしてくれます。
- インターネット上には無料で使うことができるコンテンツがますます増えています。その結果、学習者は教員が言葉で説明するであろう情報の限界点を超えて、探したり使ったり応用したりすることができます。
- 学習者は自分専用のオンライン学習環境を作ることができます。
- 多くの学習者にとっては今なお学習を導いてくれるような体系的なアプローチが必要です。
- ソーシャル・メディアでは高品質の学習を確保するために、教員の存在と指導が必要になる可能性が高いです。
- 教員は学習者がデジタル時代に必要とされる重要なスキルを身につけられるよう、学習者に対して自由と過剰な指導の間にある中間地点を見つける必要があります。