1.8 テクノロジーとオンライン学習の新たな展開の位置付け
大学でも短大でも、教員たちは現在、次のような難題に直面しています。
- 現代社会で必要な知識とスキルを展開することを助けるようなやり方で教育すること。
- ますます大きくなるクラスをうまく扱うこと。
- 多様性を増す学生層に適した教育方法を開発すること。
- 様々な講義方法を使いこなすこと。
しかし一般論としては、中等後教育の現場の教員は、教育、教授法、学習についての研究に関する研修を受ける機会はほとんど、あるいは全くありません。学校教員の多くも、激しく変化するテクノロジーを使いこなすための十分な研修を受けていません。パイロットが最新のジェット機を訓練もなしに飛ばすなどといったことは考えられません。しかし教員は、まさにそのようなことをやっているのです。
そこで本書は、どのように教えるのか、テクノロジーをどのように使うのが最良であるのかを、大学、短大、あるいは学校の中核的価値にかなったやり方で判断できるようにする枠組みの提供を目指します。その際に、学習や教育、そして教育のためのテクノロジーの利用について、過去50年以上にわたって行われてきた大量の先行研究を土台におきながら考えていきます。
次章では「デジタル時代にどのような教育をしたいか」という、何よりも重要な問いを扱います。
重要ポイント
- 特定のスキルについて、知識面での獲得だけでなく普及に役立たせる能力、そして卒業生が知識社会で働くための備えとなるような教育方法を用いなければなりません。
- 学生数が増えるにつれて、教育は様々な理由から知識伝達へと後退し、次第に質問や新しいアイデアの探求、別の見方の提示、批判的思考や独創的思考の育成などには重点が置かれなくなっていきます。しかし後者のようなスキルこそ、学生にとって知識社会で必要となるものです。
- 学生層の多様性が増していることは、教育機関にとって大きな難題です。このため、学習者を助けるには一層個別化した学習や、従来よりも柔軟に講義を支えるような教育方法が重要であると考えなければいけません。
- オンライン学習は様々な手法の連続的な集合体です。このため教員や教育組織は、1つ1つのコースや専攻プログラムを、教育手法の中のどこに位置付けるべきかということを見極めなければなりません。
- 学術的コンテンツが従来よりもオープンに、無料で手に入るようになると、学生は自分の所属する教育機関について、学習コンテンツを提供してくれるものというよりむしろ、学習を援助してくれるものとして捉えるようになります。このことから教育に関するスキルに焦点が置かれるようになり、その一方で教員のもつ専門性には焦点が置かれなくなっていきます。
- 教員組織や個々の教員は、その新旧を問わず、様々なテクノロジーのもつ価値を評価し、いつ、どのようにそのテクノロジーを自分たちが(あるいは学生たちが)使うのが合理的なのかを判断できる、強力な枠組みを持たなければなりません。