5.1 MOOCs の簡単な歴史

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図5.1.1 TED Talkで話すDaphne Koller(2012年)(訳注:日本語の字幕があります)
図5.1.1 TED Talkで話すDaphne Koller(2012年)(訳注:日本語の字幕があります)

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この YouTube 動画を観るには、画像をクリックしてください。この動画への反応を知りたい方は「Coursera スタイルのMOOCs の良いところ、悪いところ」をご覧ください。

MOOC という用語が最初に使われたのは、カナダのマニトバ大学の公開講座部門が2008年、ある講座を提供した時です。学位取得の必要単位には算入されない「結合主義と結合的知識」(CK08) は George Siemens、Stephen Downes、Dave Cormier によって設計されました。この講座は学費を払っている27名の学生が受講したほか、オンラインでも無料公開されました。教員たちが大いに驚いたのは、無料のオンライン版に2,200人もの学習者が集まったことでした。Downes はこの講座と後続の類似の講座について、その設計から connectivist(結合主義)、すなわち cMOOC と分類しました(Downes, 2012)

2011年の秋、スタンフォード大学の2人のコンピュータ科学の教授、Sebastian Thrun と Peter Norvig は「AI(人工知能)入門」という MOOC 講座を開始し、16万人以上もの受講生を集めました。この講座に続いて、まもなく2つのコンピュータ科学の領域での MOOCs 講座を、スタンフォード大学の Andrew Ng と Daphne Koller が始めました。Thrun はその後 Udacity を、Ng と Koller は Coursera を設立しました。両社とも営利企業であり、独自に開発したソフトウェアを用いて大規模な受講生の受け入れと教育プラットフォームの構築を可能にしました。両社は他の主要な大学に報酬を支払ってパートナー契約を結び、このプラットフォームを通じて独自の MOOCs 講座を提供できるようにしました。近頃 Udacity は方向性を変え、職業訓練や企業研修の市場に注力しています。

2012年3月、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学は、edX という名称のオープンソースの MOOCs プラットフォームを開発しました。edX にもオンライン受講登録や授業配信の機能がありました。edX も主要な大学との間で MOOCs 配信に関するパートナー契約を結んでおり、各大学は無償で授業を edX を使って配信できますが、中にはパートナー加入のためにお金を払う大学もありました。他にも、イギリスのオープン大学による FutureLearn など、様々な MOOCs プラットフォームが開発されています。これらを通じて提供される MOOCs の大多数はビデオ講義と機械採点によるテストに基づいているため、Downes はこれらを xMOOCs と呼び、より結合主義的な cMOOCs と区別しています。

2015年3月には、全世界での MOOCx 講座の数は 4,000を超え、そのうち1,000講座がヨーロッパの教育機関によるものでした。

参考文献

Downes, S. (2012) Massively Open Online Courses are here to stay, Stephen’s Web, July 20

ライセンス

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