第2章 知識の本質と、それが教育に対して持つ意味

この章の目的

この章では、知識の本質に関する様々な見解について、とるべき教育方法とどのような関係に立つのかを論じます。

この章を読み終わると、以下のことができるようになります。

  • あなた自身がいま行なっている教育方法を決定づける認識論的・哲学的立場に気づくこと。
  • 学術的な意味での知識と、日常的な意味での知識の違いについて考察すること。
  • テクノロジーが知識の本質を変えるか否かを判断し、教育に対して持つ意味を検討すること。
  • 主な学習理論の概要を説明し、それが教育に対して持つ意味を論じること。
  • 学習のレベルや種類が様々であることに気づき、自分の専門領域や受講生にとって、最も適切なのはどれかを判断すること。
  • 以上のようなアイデアを自身の教育のための戦略や理念にまとめ上げること。
  • この章で取り上げたような観点から、教育に対するあなた自身の取り組み方を変えるか否かを判断すること。

この章で扱う内容

この章では、知識の本質と、信じられているものが様々であることを論じ、それが教育や学習にどのように影響しているかについて検討します。

とりわけ、この章では以下のトピックを取り上げます。

加えて、この章には以下のアクティビティーが含まれています。

  • アクティビティー2.1 良い教員になるために何が必要だと考えますか
  • アクティビティー2.3 行動主義の限界を明確にする
  • アクティビティー2.4 認知主義の限界を明確にする
  • アクティビティー2.5 構成主義の限界を明確にする
  • アクティビティー2.6 結合主義の限界を明確にする
  • アクティビティー2.7 認識論と学術的な知識
  • アクティビティー2.8 学習理論を選択する

重要ポイント

  1. 教育は高度に複雑な仕事であり、文脈、テーマ、学習者に沿った多様性に適応させなければならず、広く一般化することは不可能です。個別の条件に合わせた適応や修正は当然必要ですが、それでも優れた実践や、理論・研究に基づいた運用基準や原則を示すことは可能です。
  2. 基盤となる信念や価値観は、通常は学問領域ごとに専門家の中で共有されていますが、これが教育に対する取り組み方となります。このような基盤となる信念や価値観は、特定の研究領域で「専門家」になるためには本質的な要素ですが、しばしば暗黙的なものであり、直接的には学生と共有されないこともよくあります。
  3. 学習理論がさまざまであるのは、知識をどのように捉えるかという視点がさまざまであるからです。
  4. 全ての教員は認識論上、あるいは理論上、何らかの立場を出発点においています。外見的に明確に捉えることができるものではないかもしれませんし、ひょっとすると自分自身も自らの信念をはっきりと気づいていないのかもしれませんが。
  5. 結合主義という例外はあり得ますが、本章で概説した学習理論にはいずれも、それぞれを支持する観察可能な証拠が何らかの形で存在しています。それぞれの学習理論は、有効性における違いであるのと同時に、知識そのものへの価値観や信念の違いなのです。
  6. 学術的な知識は、他の形態の知識とは区別されますが、この違いは、今日のようなデジタル時代にこそ、ますます重要な意味を持つものであると主張されています。
  7. しかし学術的な知識は、現代社会にとっては重要な知識の唯一の拠り所ではありません。教員としては他の形態の知識もある中で、学生たちにとっては学術的な知識こそが潜在的に重要であると認識しながら、デジタル時代の学生にとって必要な、あらゆるコンテンツとスキルを確実に提供できるようにしていくことが必要です。

ライセンス

クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利 4.0 国際 ライセンスのアイコン

Copyright © 2020 『日本語版』, 2015 Anthony William (Tony) Batesの「デジタル時代の教育」は、特に断りのない限り、クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利 4.0 国際 ライセンスに規定される著作権利用許諾条件。

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